玄米取り扱い説明書 ■ 健康志向は完全に定着し、ムード先行のきらいはあるものの、「スローライフ」「スローフード」といった方法論も手伝って、食生活に玄米や雑穀を取り入れる方が急増している。そのことにより、体調が良くなったり、病気が軽快することは、珍しいことではない。が、その反面、体調不良を訴える方も少なくないことも事実だ。諸刃の刃、といってはやや大げさだが、玄米雑穀は、正しく取り扱う必要がある。 第一に、しっかり噛むことである。 玄米は糠と胚芽、繊維を含むゆえに、その栄養的な価値が注目されているのだが、精製された柔かな白米よりもはるかに、口の中でしっかり、ペースト状になるまで咀嚼しないとそれらが吸収されない。どころか咀嚼不足は──胃酸濃度が低下している方などはとくに──消化不良、下痢、便秘など、体質によって様々な変調をもたらすリスクがある。 玄米食を教えている教室などでは、玄米をやや多めに口に入れ、碗と箸を置き、一口およそ50~100回、病気治しなどの場合は、100~200回、またはそれ以上、噛む練習を行う。 玄米雑穀を食生活に取り入れる、現実的な方法としては、まず白米9割に玄米や雑穀を1割程度混ぜた混合炊きを勧めたい。咀嚼をマスターしつつ、玄米の割合を増やしてゆけば良い。最近は玄米粥、玄米ミール、玄米スープ、玄米粉入りうどん、玄米パンなどが容易に入手できる。 |
それらも大いに利用されたい。 咀嚼を完璧にマスターしても、3食とも玄米を摂る必要は無い。パン食を米食中心に替え、その1食に玄米雑穀レシピを取り入れるだけで、健康レベルは大きく向上する。 第二に、玄米の質を見極めること。 玄米は精米しないので、残留農薬や、有害化学物質を摂るリスクもそのぶん増す。アトピーやガンなどとの関連が危惧される猛毒のダイオキシンなどは糠の脂肪に蓄積しやすいとの説もある。有機栽培、無農薬、低農薬といったレッテル、生産者表示などだけで安心せず、然るべき機関でしっかり残留農薬検査を実施している組織の米を選ぶべきである。(とはいえ、政治的なしがらみもあり、個人が、そういう玄米を入手することは、そう簡単ではないのだが) 危ない話しばかりで恐縮なのだが、いまひとつ「リスク」を。──硝酸態窒素、いわゆる未消化窒素の問題についてご存じであろうか。農作物の肥料として窒素肥料が使われる。生命力があった昔の農作物なら問題はなかった。が、活力を失った現在のそれは窒素を生育の糧にできず、その体内に「未消化」窒素(硝酸態窒素)として残してしまう。硝酸態窒素は糖尿病を始め多くの病気の原因になりうるが、恐ろしいことに日本には法的制限がなく、WHOの安全基準値を大きく上回り、硝酸態窒素がいわば致死量に達する「農産危険物」が普通に売られている。 この問題を解決したのが、在野の農学者・佐々木健人氏が確立した有「気」農法である。 農法の詳細について解説する紙数はないが、この農法で栽培された、たとえば小松菜、チンゲンサイは、ビタミン、ミネラルが慣行栽培(農薬、化成肥料使用)のものより数倍多く、硝酸態窒素はWHOの安全基準値以下の微量あるいは皆無。美味であり、体調改善や慢性病軽快が多数報告されている。 |
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この有気農法による玄米が出荷され、マクロビオティックの専門誌などで話題になっている。味や栄養価、安全性、申し分がない、活きた玄米であるが、残念ながら出荷量が少なく、今秋の収穫も100トンに留まる見込みである。 今回は連載初回だが、文字量を規定に納めるのに苦労した。言いたいこと、言うべきことが山ほどある。 有気玄米他、食の戦略についてご興味のある方は、筆者のウェブサイトを参照されたい。 |