……………… eat-to-win──実戦的食事「学」 ………………

メタボ内臓脂肪は、じつは悪性ホルモンを分泌、それが合併症の真因だった。巷の「ダイエット」はむしろ逆効果、ならばどうする?

■ 平成18年、厚生労働省は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に関する調査結果を発表、それは誰にとっても看過できない深刻なものだった。
要約すると、腹囲が男性で85cm、女性で90cm以上の者は、血中脂質、血圧、血糖のいずれかのリスクを2つ以上有する割合が高く、40~74歳でみると、男性の25.7%、女性の10.0%が内臓脂肪症候群と強く疑われ、その予備群と考えられる者を併せると、ほぼ2000万人に達する(!)と推測される。

メタボリックシンドロームとはつまり、肥満・高血糖・高脂血・高血圧が合併した状態であり、放っておくと、重篤な糖尿病、脳血管障害などを引き起こし、ことに心臓病リスクを30倍にも高めるといわれている。
なぜ、内臓脂肪が、これほどにも重い合併症をもたらすのかは、長い間、疑問とされていた。内臓脂肪は普通のそれと異なるのか? そうであるならどのように?
ここ数年の、米国の研究により、その謎が解き明かされてきた。
内臓脂肪は、実は様々な生理活性物質(ホルモン)を分泌していたのだ。
発症は、それら(悪玉の)生理活性物質の影響だったのだ。逆に言えば、うまく内臓脂肪を減らすことさえできれば、それに付随する様々な体調不良を解決できる。
厚生労働省は、メタボリックシンドロームを減らすことこそが、今後の医療費大幅削減につながると確信し、うまくダイエットすることさえできれば予防できるだろうと、官民あげてこの問題に取り組み始めたようだ。
しかし、それほど簡単なものなら、こんなに沢山のダイエット法や、ダイエットグッズが溢れかえるわけはない。運動量を増やしても、食事を減らしても、結局はモトの木阿弥。リバウンドを繰り返すのが落ちである。

私は専門家として「ダイエット」という用語は使わない。それは自然の理に反する行為であるからだ。
進化の過程において、我々の祖先は生命の最大の危機、飢餓を繰り返し体験してきた。そして、その経験によって、栄養を体内に留め危機に備えるという機能が遺伝子にインプットされた。つまり肥満はある意味、自然の摂理ともいえる。食わなきゃ死ぬが、食えば太る。誰もこの迷路からは逃れられない。
巷で流行の低インシュリンダイエットや、ブックスダイエット。マクロビオティック(玄米穀物食)やベジタリアン
(菜食)、ローフード(生食)など、食事療法は年々、増え続けるばかり。
自己流で失敗し、体調不良や、リバウンド、さては拒食症になる者も少なからずいる。ガンや重篤な病気で苦しむ人の中には、怪しい食指導家の指示に従い、栄養吸収もままならない状態にも関わらず、玄米と海草だけを食べ、余計に命を縮める者もいる。
ダイエットの原則は摂取量を減らすことだが──当たり前だろって?──実はダイエットに失敗する原因は、食事を減らし過ぎることにあるのだ。
自己流や偏った減量食を始めると、当初は確かに体重が減少していくのだが、いつのまにか筋肉量が落ち、体は代謝を低下させていく。その状態で、同じ量の食事を摂れば以前より太りやすくなってしまう。栄養不足、代謝不足の「合併症」、リバウンドだ。
ダイエット法や食事法は百家争鳴である。あるそれがいう最良の食材を別のそれは最悪だという。勉強すればするほど混乱してしまうだろう。
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結局のところ、それを食べていれば安心、という魔法の食材はない。
多種の「良質な」ものをバランス良く食べるしかないのだが、そういわれるだけでは戸惑ってしまうだろう。
残念、ここで紙数が尽きてしまった。
次号、米国最新の代謝研究成果をふまえた食事法、真にヘルシーな「ダイエット」法について、具体的に、できるだけシンプルにお伝えしよう。