……………… 飯島夏樹レジェンダリー 2009 ………………

▲「夏樹は、この世に、エネルギーを遺した」と逝去の記事に書いたが、たとえば、かれによって、何百万の人が、海の甘さを知っただろう
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ドラマ「天国で君に逢えたら」は、疲れ、窮し、
見失ったこの国に降り、潤す、「慈雨」だった。


■まずニュースから。
9月24日放映された TBS ドラマ「天国で君に逢えたら」が DVD 化され、来年3月3日に発売される。飯島夏樹は、2005年3月2日に召されたので、その5年と1日後になる。

読者の多くはドラマをご覧になられただろう。
「夏樹さん、カッコいいっす」と、主演の二宮和也がオマージュを贈るプロローグだけで涙腺が弛んだのでは?
飯島夏樹原作というひいき目抜きでも、高評価されようドラマだった。
放映直後から、オフィシャルサイト
http://www.tbs.co.jp/tenkimi/
の BBS や、奥様の寛子さんが引き継がれているブログ http://natsuki.air-nifty.com/
に、多数の、絶賛の書き込みがあった。それらを大別すると、下記の二種になると思う。

「最近のドラマは変に凝ってオーバーなものが多いですが、天君は、メッセージがシンプルで、ゆったりと展開し、心が温まりました。
久しぶりに、かつての名作のような上質なドラマを観ました」

「ぜひ続編を。連ドラ化を」

反響はネットに留まらなかった。
夏樹の小説、エッセイの版元、新潮社は、作品の帯を二宮和也の写真付きに差し替えた。
ドラマ化によって原作は改めて売り上げを伸ばすものだが、天君の場合、例外的に顕著だったという。

主演の二宮和也、井上真央、緒形直人、宮本信子らキャスティングは豪華なだけではなく、なるほどと感じさせるもので、かれらひとりひとりの演技が素晴らしく、ちょっとこの俳優が、というキズもなかった。

原作に惚れ込んだ TBS ドラマプロデューサーの瀬戸口克陽氏は、俳優ひとりひとりに出演交渉し、このドラマにかける熱意を伝えた。
主人公の純一役は二宮しかいないと決め、かれが純一をよりリアルに演じられる年齢になるまで、待ちさえした。
撮影にも万全が期された。フレーミングや衣装で技術的に工夫しても、カメラには季節が映るからと、南房での撮影は春まで待った。

物語がゆったりと流れながら、冗長なところがない脚本も、2時間を短く感じさせるものだった。
「やっぱり天国はあったよ」と、
亡くなった "シュージ” から、小児ガン患者の "愛ちゃん" に伝言が届くラストシーンのキレも、物語の続きを予感させるエピローグの余韻も、見事で上質だった。

瀬戸口克陽プロデュース、岡田惠和脚本、土井裕泰演出は、この種のドラマ制作にかけてはドリームチームと聞く。
「結果」は、原作、才能、熱意、費やされたコストによる必然だった、ともいえる。

放映前の瀬戸口氏へのインタビューで、映画に対するテレビドラマのアドバンテージってなんですか? と聞いた。
「出会いがあることです」
と氏は答えた。
「映画は、自分の好きなジャンルのそれを選び、多かれ少なかれ内容をチェックして、映画館に足を運び、切符を買って観ますよね」
「テレビドラマは電波に乗って、空から降り注いでくる。日本全土に、雨のように。
夏樹さんのことを全く知らなかった人たちも、"出会う" 可能性があるのです」

雨、というのは素敵な表現だ。
じっさいに、このドラマで夏樹を知ったというネットの書き込みも少なくなかった。
ドラマ「天国で君に逢えたら」は、疲れ、窮し、見失ったこの国に降り、潤す、「慈雨」だった。

瀬戸口氏はこのドラマを、あの「北の国から」のような、朗々と続く国民的ドラマに育てたい、と語っておられた。
ドラマも続編を予感させるものだった。
しかし残念ながら、現在のところ、続編製作も、だから連ドラ化も未定、可能性はあるが……という状況であるらしい。

実現のためできることは声を出すことだ。
幸いなことにネットがある。
ネットには、世界を動かしうる、ある意味統一された集合意志をつくるはたらきがある。
(簡単にいえばクチコミ、かっこよくいえばミーム?)
Blog、Twitter、SNS……、
ドラマに感動された方はぜひ、
「やっぱ夏樹さんってすげえよな」とか
「さすが TBS ドラマだな」とか、がしがし書き込まれたい。