質問; 「不動産とその真実を見極める知能」です。 私の事務所には、一線のビジネスマンなど、IQもEQも さぞや、と思われる方がたくさんいらっしゃいます。 が、かれらのRQは驚くほど貧弱です。低いRQは、 人生を台無しにしかねないというのに……。 ■子供のころ描いていた「大人の世界」は、もっと素晴らしいものだった。完璧ではなく、多少のガタはあるかも知れないが、信頼に足る、合理的なシステムであると思っていた。 いざ社会に出てみると。………。言うこととやることが全然違うじゃないか。子供には「嘘をついてはいけません」と言いながら、オトナたちの仕事の世界には、間違いや嘘が溢れている。 幸か不幸か、私は変わり者で、それに巻かれようとしなかった。 不動産を売る側にいたのだが、業界の不透明な慣行や売る側の論理に疑問を感じ、業界初の「個人向け不動産コンサルティングサービス」を提供する「さくら事務所」を7年前に興した。ちなみに社名は娘の名前だ。 「個人向け不動産コンサルティング」? きっとまだご存知ない方のほうが多いだろう。一言でいえば、不動産についての個人的な「かかりつけのお医者さん」のようなものだ。 中立な立場の第三者として、住宅購入の検討をする方の相談にのったり、物件を調査したりする。 住宅購入を検討する際には、売買利害関係のないプロのアドバイスが必要だと、現在とは逆の立場で仕事していた現場で、日々痛感していた。 かつて不動産ディベロッパーであり、現在はコンサルタントである私の目には、裏も表も虚も実もよく映る。 例えば、マイホームの世界の常識には、「嘘」や「間違い」が多い。正確に言えば、「時代遅れの常識」や「何らかの意図──残念ながら悪意であることが多い──をかくし持った情報」が溢れている。以下の項目、あなたはいくつ「YES」と答えるだろうか。 …………………………………… □住宅には「資産価値」がある □家賃はドブに捨てるようなもの □マイホームを買ってはじめて一人前 □高齢になると住宅を借りられない □低金利の今が買い時 □頭金は2割が目安 □中古より、やはり新築 …………………………………… このうちのひとつでも「YES」と答えたあなたは、玉石混淆のメディア情報、古い常識、時代が生んだ大衆価値観に──たぶん──囚われている。それらはすべて幻想、あるいは間違いだというのに。 意図のある情報や、バイアスのかかった話に食傷気味のあなたのために(そんなあなたのRQを高めるために)、この連載は始められた。編集長はじめ各位より、「言いたいことを言えーっ!」と命じられている。スポンサー配慮とか、意図的バイアスは不必要、と勝手に解釈し、触れれば火傷しそうな「真実」だけを語ろう。 たとえば、日本の住宅には、本当の意味での「資産価値」など、ない。 一般的に「資産」というものは、時代の流れなどで価値の増減はあるものの、長い眼で見ればその価値は循環するものだ。 |
株式・金などのように、高いときもあれば、低いときもある。ところが日本の不動産、とりわけ「住宅」は違う。時間の経過とともにその価値はどんどん減少していくのみ、というのが実情だ。 現在、建物の評価は、新築のときに最もその価値が高く、買って住んだ瞬間に10%~20%、ともすればもっと下がる。さらに、わずか20年程度でその価値をほぼゼロへとまっしぐらに減少させてしまう。国もまた、そんな査定方法を奨励してきたのだ。 戦後からバブル崩壊前までの右肩上がりの成長期は、「土地」「建物」のうち「土地」の価格が、「建物」の価値減少割合を凌駕する上昇をみせ、確かに国民は資産形成ができた。私の親は1973年に住宅を購入しているが、彼らの世代は争うように住宅を購入し、小さな家から大きな住宅へ住み替えていく「住宅すごろく」の上がりを目指して、そのものを人生の目的として、まさにモーレツに働いたものだ。 ──しかしバブルは崩壊、同時に日本の戦後経済システムも崩壊の一途をたどった。終身雇用しかり、年功序列、土地神話しかり。 かつての日本経済は、「土地」という資産を経済システムにうまく組み込んで成功してきた。土地に担保力(信用)を持たせ、金融機関はそれを担保にお金を貸し出し、事業を興させ、その利益でまた土地を買う。仕組みの中に「土地」を介入させて上手く経済をまわし、膨らませてきたという経緯。このしくみを考案した当時の官僚はたしかに有能だったが、一方で、弊害も生み出した。土地の価格は、いくらなんでも異常に上がりすぎた。諸外国の地価は一般的に、GDPの伸びと同じような軌道を描く。ところが前述の「土地本位制資本主義」経済システムによって、日本だけは、地価が異常に高騰したのだ(別表参照)。 結果、国民の住宅価格が所得に比して手が届きにくいものとなり、欧米から「ウサギ小屋」などと揶揄されることにもなった。さらに、「土地」が不当に価値を持ちすぎて、相対的にも絶対的にも「建物」の価値が認められてこなかった。「建物は20年もすれば価値ゼロ」という、現在の建物に対する日本的価値観はここに起因している。 先だっての「公示地価」発表から「地価の底入れ感」的風潮もあるが、それは我々庶民には関係のないことだ。地価の上昇理由は、資金を投じて開発した都心の一部と超低金利によるマンションバブル、不動産の金融商品化によるファンドバブルなどで説明できる。 都心の一部を除き、私達が住宅購入の際に検討する地域の多くの地価は、まだまだ下がる。私は、まだあと30%~50%は下がるとみている。 住宅に資産価値があるというのは幻想だ。価値を確実に減少させるものは「資産」とは呼べない。むしろ「消費財」に近い。事実、これまで日本の「建物」は耐久消費財的扱いだったのだ。こう論ずると、私はまるで「マイホーム購入否定論者」のように思われるかもしれないが、決してそうではない。「子供に部屋を与えたい」「自分らしいマイホームを建てたい」など、自身や家族の夢をかなえる手段としてのマイホーム購入は素晴らしいと思っている。 私は要するに、こう言いたいのだ。 「資産価値や損得勘定だけでマイホーム購入を検討すると失敗する」 「夢」か「損得勘定」か。 マイホームは、「損得勘定」だけなら確実に損をする。買わないほうがいい。 「夢」があるならぜひかなえればいい。それは、しかるべきリスクヘッジが前提だ。リスクヘッジとは真実に基づく「知識武装」に他ならない。次回以降、是非ここで「RQ武装」に励んでいただきたい。それはあなたの生活を強力に防御し、かつハッピーにしうる。 (連載2回目以降はPDFをご覧下さい) | → download to read → download to read → download to read → download to read |