移住成功3鉄則 東伊豆での新生活は夢ではなく「現実」なのだ。 湘南は、海が見えなくても坪100万という土地はざら。30坪で3000万、予算の下限が5-6000万となっては、誰もが家を構えられるわけではない。 しかし東伊豆なら、生活の便利さを犠牲にせず、海を望み、森に囲まれた暮らしが 3000万──場合によっては2000万でも──あれば充分に実現できる。 しかし──、憧れだけで移住し、失敗、後悔している人が多いのもまた事実だ。 東伊豆の達人、榎並徹氏に、移住と生活の成功法を訊いた。 ■榎並と申します。 若いころはヨット、57歳になった現在の方が過激で、ウインドサーフィンによる波乗りに夢中で、そういう理由で東伊豆に住んで35年になり、伊東市で、ハウスメーカーを経営しております。 小さな会社で、私は有名建築家でもなんでもありませんから、億の予算を持って、豪邸をオーダーするようなお客さんはうちには来ません。 ごく一般的なお客様、限られた予算のなかで、できるだけ意に沿った暮らしが実現できるよう、お客様と一緒に歩いて、土地を探すことから始めています。年に新築を6件、大きめのリフォームを12件、そのくらいのキャパシティです。この地に精通していることを活かし、仕事の量を増やすのではなく、ひとつひとつの密度を高めることを心がけています。 東伊豆に移住されたうちのお客さんは現役の方が多いですよ。 まずは50代の会社員。管理職や役員で、東京出勤は週に2、3度、あとはネットを使って在宅勤務というパターンですね。カメラマン、陶芸家など自由業者さん、甘くはないですが、パン屋さんなど、こちらで開業される方。 そんな職種に関係なく、ふたつに大別することもできます。 東伊豆に移住して幸福になられた方と、そうではない方です。 私などはお客様を幸福にすることが仕事だと思ってるのであれこれしつこく確認して、「いいから希望の家を建ててくれ」とよく叱られたり(笑) あるお客さんは総予算2000万で、とにかく海際に家が建たないかと。 「漁港の脇の網干し場の隣の20坪の土地でもいいから」と。 これは無理なんです。ご予算の問題ではなく、そういう場所に、売りに出される土地が無いからです。 海際の、ローカルの人が古くから住んでる村や町も、冠婚葬祭の独特な風習など、外の人が入って馴染むのは難しい。いきおい対象は、山や丘陵の分譲地に限られてきます。 海が見える物件も多いし、森も残っているし、傾斜地ゆえ隣家と軒を接することもないのでプライバシーも保たれる。いいのですが留意点もある。 ひとつが台風です。じっさいに現場が残っていますが、谷に圧縮されて、大木が軒並みなぎ倒されるような突風が吹くこともあり、屋根を山の斜面角度と同じ片流れにするなど工夫が必要です。東京の工務店が建てた家はよく屋根が飛ばされる(笑) もうひとつが地盤です。 |
伊豆高原などは岩盤ですが、地盤が軟弱で水害に弱い場所も多いのです。 おまけに静岡県は耐震基準も高い。 不動産業者に案内されて、 「どうですこの眺望、真っ正面に見えるのは大島ですよ」なんて口説かれて、その土地を買ったら地盤が悪くて、杭まで打たなくちゃならなくて、総予算3000万のうち1500万が基礎工事に消えて、上屋を建てる金がなくなったという笑えない笑い話もよく聞きます。間に合わせの上屋を建て、転売しようにも売れず……。 ついでに申し添えますと、「温泉つき」という魅力的なコピー。 そこに家を建て、風呂の蛇口をひねると温泉がじゃんじゃんあふれ出し……というわけではありません。温泉(を引く権利)つき、ということなのです。 幹線から温泉を引きこむ工事が必要で、これに約200万、温泉使用料ももちろん別途必要。泉音が低い場合、温泉を引くような人は岩風呂や露天にしたいから(よけいに冷めてしまうので)ボイラーも必要。高価な温泉用ボイラーを導入できればいいですが、一般ボイラーは温泉成分による腐食で、だいたい3年でダメになります。 もっといえば国立公園の問題。 国立公園に自宅があるというのは一種のステイタスのようですが、家の色や屋根の形など様々な規制があります。 道路から20m以上セットバックした位置でないと家屋が建てられないというのもあって、広大な敷地が必要だったり。これら規制は緩和される方向にありますが。 以上は住宅のハードの話し。 次に、「東伊豆に移住して幸福になるため」に、ハード以上に重要な、移住者の「ビジョン」についてです。 そう、東伊豆はそこに住む人を選ぶのです。なぜ東伊豆で生活するのか、その必然性が重要なのです。 それがなく、憧れやムード的な理由だけで移住した人は、半年、一年で──必ずといっていいくらいですが──後悔します。伊豆では比較的便利といっても都市生活に較べればはるかに不便です。そこに暮らしているだけでは半年で飽き、不便さだけを感じるようになります。 必然性とは、サーファーであったり、ダイバーであったり、釣り師であったり、自宅に釜を持つ必要がある陶芸家であったりすることです。 あたりまえですが、移住とはそこに家を建てることではなく、そのフィールドとともに「生活を実現する」ことです。この意味で──ハウスメーカーの社長が言うべきことではありませんが──その一手段に過ぎない家に、お金を掛けすぎるべきではないと私は思います。 無理な住宅ローンを組んで、その返済だけでいっぱいいっぱいになり、夫婦で旅に出たり、たまにはおいしいレストランで奮発するといった「生活」が奪われたら、本末転倒だし、悲劇でしょう。 でも、さあ家を建てるぞ、という気持ちは一種の熱病ですから、つい冷静さを失ってその種のミスを犯すのです。 私自身その轍を踏みそうになったことがあります。 「仕事とは金ではなく時間を作る手段 である」というのが私のモットーです。あと3年で還暦ですが、ウインドサーフィンに夢中で、年間200日海に出たこともあります。大きな声では言えませんが、朝礼後海に直行、ワンラウンド乗って、午後クライアント回りというパターンで、そういう生活と健康を私は何より大切にしています。 ところが、一時期「ハウスメーカーの社長らしい邸宅を建ててやるか」という熱病に罹ってしまったことがあるのです。幸い、熱は引きましたが、そうでなければ海にも出られず、ストレスで、いまごろ病気になっていたかも知れません。 私はどうしたか? 小さな建て売りを買って、リフォームしたのです。 これも(移住者にも)良い方法です。 購入と同時にリフォームする必要はありません。暮らしながら、必要なところをこつこつリフォームしてゆけばいいのですから。 |
→ download to read 移住成功例 伊豆高原S氏邸(写真家・62歳) 200坪・2000万の中古物件を 1500万でリフォーム ■Sさんは現在62歳。都心の大手出版社で、カメラマンとして長く、第一線で活躍、多くの後輩に慕われ、目標となっています。 55歳の時、自分のために写真を撮りたいと早期退職。食材と料理撮影を含む、「食」を総合プロデュースする事務所を設立。2部の写真集を出版。 趣味は釣りで、魚探とGPS装備の漁船仕様ボートで本格的に30年続けられています。 「60になったら沖縄に移住して、日の出とともに起き、日没とともに眠る」と公言されていましたが、再婚された奥様のご希望で、沖縄ではなく伊豆高原でペンション経営、に針路修正。 S氏の料理の腕を活かし、日に一組か二組の客を迎える、プライベートなペンションというビジョンのもと物件を探し、伊豆高原でも最初に分譲された 一等地のこの中古物件を05年2月に購入。すでに人が住んでおらず、上屋はかなり痛んでいましたが、2階から見える東伊豆の山稜と相模湾に惹かれて決めたとのことです。S氏にとっては、鎌倉、三浦に続く、これが3軒目の自邸となりました。 1500万のご予算でリフォームを依頼され、調査に行きましたが、一見廃屋か、と思えるような状態でした。 リフォームは新築よりはるかに難しい作業です。古い家屋の柱配置など基本構造をそのままに、新しい住人のライフスタイルを実現するパズルのような作業。 もうひとつは見積もりです。 リフォームの場合、床を剥がすと基礎がダメだったというようなことが頻発します。けれど見積もり段階でそこまで調査するわけにはゆきません。だから大手の見積もりにはかなりの「安全率」が含まれることになります。 (続きはPDFでお読みください) |