…………… 激画家 ひぐちあつを が夢想するグリーンハウス ……………

文書名 -bts0701_greenHOUSE1.pdf

ニッポンの住まいに足りないのは、
イマジネーション(妄想力)だ。

いや冗談ではないのだ。これから家を建てようとする施主のイマジネーションが足りないことはシリアスな問題なのだ。キッチンはアイランドで、ムクのフローリング、小さくても書斎を……こだわりはある。それらは末梢だ。そしていきなり住宅ローン金利や予算による建材の制限など現実に圧倒され、家造りという甘美なデキゴトは苦行になってしまう。
——その家で、毎晩どんな気持ちで晩飯がとれるのか。わが子がどう育つのか。どんな暮らしを実現したいのか。そういう、楽しく、図太く、周到なブレーンストーミング、妄想、脳内試行錯誤の果てに、ヘルシーでハッピーな「生活」は実現するのだ。

文書名 -bts0701_greenHOUSE2.pdf

激画家・ひぐちあつをが
夢想するグリーンハウス


"GREEN HOUSE"、一般には緑に囲まれた家、
の意だが、ここでは、
「人類一人一人にとって、政治、
経済どころか、環境問題が、——生存に直結するゆえ──深刻になり、それと対峙せざるをえぬ21世紀、実現すべき住まい」とする。
GREEN HOUSEは生活の方針であり、
人それぞれのそれがある。
激画家・樋口篤郎がイマジネーションする"GREEN HOUSE"はこうである。
■夢の家と住環境を、少々ぶっとんだくらいでいいので奔放に表現してくれ、と依頼されてこんな絵を描きましたが、描きながら、ああ、夢といえ、自分は現実に、質的にはこの絵のような暮らしをしてるな、と気づきました。
最近2軒続けて立ち退きになりましたが(基礎が傾いた、大家の娘が結婚してそこに住みたいと言った)ずっと、湘南、茅ヶ崎〜鵠沼間の、賃貸一軒家に住んでいます。
家を探すときの第一条件が、海に近いことです。自転車で5分以内。家でイラストの仕事をしていて、風が変わったらすぐに海に出たいからです。今は辻堂ですが、ポイントまですぐです。波乗りとスケートボード、スノーボードが好きで、イラストのクライアントもそれらの雑誌やメーカーです。
僕自身、3S(Surfing/ Skate/ Snow)をカラダでやってるから、アタマ(絵)で表現できると思ってて、そこは大事にしてます。
メシ食ったり、寝てる時間を別にすれば、家でイラスト描いてるか、辻堂で波乗りしてるか、平塚のスケートボードパークにいるかです。
雪山は家の近くにはありませんが、つまりこの絵のような生活を、実際にしてることになるわけです。サーフトリップも楽しいでしょうが、とことこ歩いてゆける場所で、波乗りもスケートもできるほうがラクです。
僕は運転免許を持ってません。ついでに言うと携帯電話も。欲しいと思ったこともありません。雪山には友だちのクルマに乗っけてもらうか、電車飛行機で行きます。

文書名 -bts0701_greenHOUSE-3.pdf

遊職住一体、家族+自然+友だち



■この絵のロケーションは江ノ島沖、湘南です。マウイでもモナコでも埼玉でもありません。
湘南には友だちがいるからです。友だちがいれば、波乗りもスケートも何倍も楽しくなります。
僕はどこか違う場所に越して、新しい生活を始めたいなどと思ったことは露ほどもありません。わんこが電柱におしっこするみたいに、茅ヶ崎-鵠沼間にはじぶんの痕、においがしみついています。
汗を掻き何度も洗濯して肌に馴染んだ綿のTシャツみたいなもんです。
家もそうです。僕はオサレな家が苦手です。ガラスとステンレスの内装の都心の高層マンションなんかに住んだらきっと病気になります。くれるといっても要りません。
そのかわりと言ってはなんですが、すきま風、生活臭、ムカデ、カビなどは平気です。
もしもなんらかのラッキーなことがあって大金が入ったらぜったい日本家屋を建てます。新築ではなく、古い農家や長屋を移築します。黒くすすけた大黒柱やツバメの巣つきなら最高ですね。便所が水洗じゃなくても、家の中がひんやり薄暗くてもぜんぜん構いません。
なんでそういう趣味なんだって?
……ひとつは幼時体験でしょう。僕は埼玉の田舎で生まれ育ちました。
畑には芋穴という、芋を保管する深さ3メートルほどの縦穴がありました。一年中芋を仕舞ってるわけではありませんから、そこを基地にして遊ぶわけです。お百姓さんに見つかったらもちろん怒られますからそういうスリルもあります。
芋穴にはローソクを持って降りるのです。照明と、もうひとつは、かつて警察が上九一色村のサティアンに踏み込んだときのカナリア的役割です。ローソクが消えるとその穴は酸欠で危険なのです。
いまも芋穴のひんやりと饐えた土のにおい、わくわくするような、落ち着くような、不思議な気持ちを思い出します。
■樋口篤郎

文書名 -bts0701_greenHOUSE-4.pdf

じぶんの手垢や、においの
ついた家こそ心地よ


家の中に家があっても
いいじゃないか(岡本太郎調で)

■ぼくの理想の住まいがこれです。
お金があったらぜったいに昭和30年代の長屋を探して移築したいです。
「おや熊さん、加減はどーでぇ」「さっぱりだよぉ八っあん、このままじゃ女房を質に出さなきゃなんねえよぉ」と貧乏長屋ごっこもできるし。
僕の仕事場に布団を敷くと夫婦の寝室になって、先に床に入った女房が、
「あんたぁ、はやく灯りを消しとくれよぁ、あたしゃ朝が早いんだからさぁ」「るせいっ!誰のせいでメシが食えてると思ってるンでいっ」
なんでもパーティションで区切ってしまう家は良くないですよ。夫婦仲は冷えるし、ガキはグレるし。
デザートは眼のスイーツ
おなかいっぱい

■自分はさんざん波に乗り、スケートして、でもトシだからすぐおなかいっぱいになって早めに上がる。っていうか温泉とビールというデザートが楽しみなんだな。
こんな露天風呂なら、夕焼けと、若いのが滑ってるのを見ながら、
「あーあ、なっちゃいねーな」とケチつけながらゲップしたり、眼のごちそうでしめられてサイコーだな。v


とーちゃんは年中短パン
かーちゃんは四六時中すっぴん

■さいごに自分(樋口)と家族について紹介させてください。
会社勤めは1年半、サーフボード工場を1年でクビになり(他のブランドの板で大会に出たら)、フリーのエアブラッシャーとして独立、
30歳のときイラストを描き始め現在に至る。44歳です。
仕事のフィールドは3S(Surfing/ Skate / Snow)、イラストのみならず、サーフボードのエアブラシ、スノーボードのグラフィック、ポスター、ロゴやショップのカンバンも描きます。
かーちゃんはスイマー。結婚式以来化粧しているのを一度も見たことがありません。ナチュラルさを大事にする湘南ガール的村上里佳子風価値観によるものではなくたんなる無精。でもけっこううまいメシを作ります。
中二のガキはセミプロのBMXライダー。おれよりでかく、腕っ節も強いのでときどき怖いです。グレないように祈ってます。
なお、絵のペット、家具、横乗りの板などはほとんど実在のものです。よかったらサイトをのぞいて下さい。
www.a2graphic.com
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