Design 01
スケルトンハウス。風が抜け、 TEL: 045-904-5417 http://www.nature-decor.com ■33歳の気鋭。「施工の現場」からこの世界に入り、独学で一級建築士に。タイル一枚から構造までとことん作り込める住宅デザインこそ天職。若年ながらすでに150棟以上を手がける。 本デザインは、「ガーデン&ファニチャーズ」長谷川氏( http://www.garden-and-furnitures.com)とのコラボレーション。 スケルトンハウスとは ■強度、耐震性充分な、大断面門型の箱をそっくり外構とし、その中に3層の床を設ける。海側は全開放され、山側に向かって光と風が流通する。左右は頑丈な壁でガードされ、プライヴァシーを確保する。 ■僕はだいたい「内側」から考えてゆくんですね。そのご家族がこの家で、どんなふうに暮らすのだろう(暮らしたいのだろう)と考え、素材を含めてインテリアをイメージする。 次に、その内と「外」をどうつなぐかを考えます。両者を分かつのではなく、空気や光が流通し、開放感があり、内と外の相乗効果によって快適さのレベルを高めるような。 この敷地は、南東面が海に隣接し、北側にも自然植生の丘が迫っています。潮汐や、海風、まずめ……水や空気が高みから低いところに流れるのは、無生物と生物をつなぐなりわいというか、ガイアというか、そういうことが濃い立地で──あれ、何が言いたいのか分からなくなっちゃった──とにかく僕としては腕が鳴るんです(笑)。 一方で、予算2000万という制限がある。この企画をお聞きしたとき、それって税込み、税別?と確認したくらいです。 あれこれと考えて、至った結論は「スケルトンハウス」です。 |
海に向かって開いていることと、山へと抜ける開放感は絶対妥協したくなかった。その上でコストを抑えるには、一法として、外構をシンプルにして、壁量や筋交いや間仕切りとかを合理的に減らすことです。 木造門型フレーム(http://www.mongata.com/)という建材があります。 文字どおり木造の門型フレームで、大スパン可能で、工場生産されるため、強度、精度、耐震性に優れます。このフレームに壁と天井を張り、要するにコの字断面の箱を造り、これを住宅の外構にするのです。強度は箱で確保され、箱の中に三層、BF、1F(正確には1.5F)、2F(同2.5F)の床を造る、という考え方です。海と山方向には開き、左右は頑丈な壁でガードされプライバシーを確保します。門型フレームは安くはありませんが、このように使用することにより全体のコストが抑えられます。 外観がシンプルになりすぎる──ただのでかい箱ですから──きらいはありますが、このお施主さんの場合かえって面白がってくれるのではと判断しました。 このプランで35坪弱ですから、2000万で割ると……57万……設計監理込み……なんとか可能です、内装を考えれば……、やりますやります、じっさいやれと言われれば(笑)。 立体構成はやや複雑なので、模型とスケッチを参照していただくとして、ここでは各部を説明してゆきます。 半階高ぶんの階段を上って玄関ホールに入ると明るく、大開口部から眺望が広がります。この位置からは空が視界の多くを占め、海は水平線しか見えないはずです。1FのLDKにはさらに半階高ぶんの階段を上るのですが、1段1段上るたび、視界に海が広がってゆきます。パノラミックでドラマティック、来訪者に驚きを与え、居住者にとっても──海は刻々表情を変えるから──日々新鮮なはずです。 右のリビングはふたつの「ゾーン」が連続します。インドアゾーンとオープンエアゾーンです。両者は全解放する折れ戸でつながります。オープンエアゾーンはいわゆるデッキではなく、単なる「外」ではありません。海に向かっては解放され、しかし「箱」の壁と天井で守られているからです。プライヴェートで居心地良く、雨や風の日でも使えます。 |
リビングの壁には内外連続するカウンターを設けることにより、パース効果による連続感、広さ感を実現します。内側カウンターには薄型テレビなどのAV機器、外には暖炉を設けるのはどうでしょう。 ヨットを舫う浮き桟橋に続くBFは、シャーワーつきのデッキから連続するバスルームと、ウインドサーフィンの板やセイルのリペアも可能な広いワークスペースです。浮き桟橋、バスルーム、ワークスペース、オープンエアリビングは階段で結ばれ回遊性があります。 海から上がってデッキのシャワーで潮を落とし、ワークスペースにウェットを仕舞い、風呂で暖まってリビングへ、といった使い勝手です。BFの山側はストレージとし、大収納が可能です。 1Fのファミリールーム(PCコーナー他多用途スペース)から螺旋階段でアクセスする2Fは主寝室と子供部屋。主寝室には専用オープンエアデッキと小さな書斎スペースを設け、研究者であるお父さんが自宅に持ち帰った仕事をこなすことができます。子供部屋ももちろん、吹き抜けの向こうに海が広がります。息子さんが高校留学した場合、子供部屋の間仕切りを撤去すると2Fは広大なプライヴェートルームになります。 この家はどの部分も海に向かって開いています。 パノラマリビング ■玄関ホールに立つと視界いっぱいに水平線と空が広がり、LDKフロアに続く階段を上るにつれ海が大きくなる。海は刻々と変わり、映画的な日常がもたらされる。 室内の一部としてのオープンエアデッキ ■海に向かって開放されたデッキをいくつも有するが「スケルトン」ゆえ壁と天井でガードされる(81page模型写真参照)。プライヴァシー万全、多少の雨風なら平気。 BFは遊びのスペース ■桟橋、シャワーつきデッキ、リペアも出来る艇庫。これら3者と1Fのオープンエアリビングは回廊で結ばれ、使い勝手が良い。 オープンエアダイニングはいかが? (OPTION) ■2000万の予算では無理だが、山側前庭に、1Fファミリールームと連続する空中デッキを設けるとこの家はより楽しくなる。BBQグリルと水回りは必須。 |