スノーボーディングにおける理想は、 ■そのブーツの開発者は、ある夜、夢をみた。……スティープで、ところどころ岩が露出したやばいシュートをクルージングダウンしていた。 なんでこんなにリスキーなスノーボーデインクをやってるのに、こんなに気持ちがいいのだろうと不思議なココロもち、気づくと彼は素足で、足の裏がボードに直接マウントされていて、すべてがフレックスで、すべてがライト……。 夢の中の自分がリアルなのか、目を覚まして いる自分がリアルなのか、という文学的命題 は措いておくとして、現実はちょっと面倒な 現実的対応を要求するから、彼はそれを現実 化するために、悩んだとさ。 「スノーボードのハードギアのなかで、ブーツがいちばん、量産工業製品として未熟なものなのです」 とチャーリー・メスマーは言う。 |
だって厳密な意味で、これまで”スノーボード”ブーツは無かったんですよ。 BLAX以前のスノーボードブーツは、アルパイン・スキーブーツか、山スキーブーツのモールドを使っていて、つまり転用、妥協なんです。BLAX は私なりの、世界で初めての"SNOWBOARD"ブーツなのです。 スノーボードブーツは、前後左右、3次元的なフレックスを要求する(分かるね) とは言え、フレックス、は難しい。 単にフレキシブルなだけであればコシが無く、ボードのエッジをして雪面を「切る」パワーは無い。 ふたたびチャーリー。 「裸足に近いレスポンスを得るためにプ一ツ 丈を短くして──端的に言うとスキーブ一ツ とテニスシューズの違いだね──さらにオー バーラップ構造を採用したんだ。 通常のスノーボードブーツは、タンをスネに押し付けることによって密着性を得るよね、でもそれは合理的じやない。 アウターシェルが、二つの手のひらで足を包みこむように“オーバーラップ”すれば、ブーツと足の密着性力が高まる。 BLAXのインナーにはシューレース(靴紐)がついてない、必要ないんだ」 |
フランク・モーランバルのコメントはもっと単純だ。 「BLAXの利点はブーツのなかで足が動かないことだ」 前号ECSTASYで述べた、ボードのフレックスとトーション・スティフネスの両立と同様、ブーツも、相反するスティフネス(足をしっかりサポートすること)とフレックス(その上で柔軟であること)の両立が必要だ。 BLAXは、オーバーラップによりスティフネスを得、短いブーツ丈とシェルの素材、カットオフなどによりフレックスを得ている。 でも、それで充分、ではない。 レスポンスである。 透視図を見てほしい。BLAXブーツとパインデインクにおいては、足の裏がボードのデッキと極めて近い面上に位置している。 シェルのボトム深くまでインナーがインサートされ、薄く堅いソールを介してパインデインクにロックされることにくり、素足に近い感覚でボードからの情報を得、コントロールできる。 ある種のハードブーツに見られる高いヒールと柔らかいビブラムソールに拠れば、レスポンスが遅れ、曖昧になる。 「高速でエッジトゥエッジを繰り返すスラ−ムにおいては、ボードのソールと脳が直接つながっているような状態が理想だ」 レース中、フランクはBLAXの存在を忘れているのである。 |