………………ウインドサーファーなら、やんなきゃウソだぜ、ボードフィッシング………………






強風も大波も巨鯛も
佐藤誠司 爆釣指南 01


ウインドサーファーなら、
やんなきゃウソだぜ、
ボードフィッシング











■その朝、鎌倉は材木座海岸に出て、いつもの
ように新品の潮風を肺にぶちこんでいると、お
や、由比ヶ浜方面から歩いてくる長身は柳沢プ
ロではないか?
いきなりだ、
「セージさん、きのう、スズキのでかいの上げ
ましたよ、79cm」
79cm!、しかしにわかには信じられない、釣
り師の場合、釣ったサイズの1~3割増しは当
たり前、ひでえのになると5割増しだからだ。
いや、柳沢プロがそうだと言ってるんじゃあり
ませんよ、一般論としてね。
しかし微妙だ。79cm? 80cm越えしていないぶん
リアリティがある。(ほんとに79cmなら、たいてい
の釣り師は81cmと言うのだ)

「すげーじゃん、ヒットルアーは?」
「昨日はバイブレーションのナチュラルカラーが良
かったすね、バンバン追ってきましたよ」
board_fishing_01.pdf
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浅野則夫プロにも大物釣り自慢ぶちかまされたことが
ある。
おれの顔、見るなりノリオ、
「こないだでかい真鯛上げましたよ、5kg、ルアー
で」
ルアーで、というところがミソなのだ。
生餌ではなく、ルアーやフライなど疑似餌で釣る方
が、サカナを欺かないといけないぶん難しくステイタ
スがある。アルミブームとカーボンブームくらいの差
はあるのだ。
おいらもすかさず切り返す。
「おれもこないだ5kg越え、上げたよ、しかしあれだ
ね、真鯛も5kg越えンとそーとー手ごわいね、ま、
食って旨いのは2kgまでだけどさ」
口数が多いのには理由がある。
ノリオに、どんな方法で釣ったのか聞かれるのが怖い
のだ。
幸い、ノリオはオトナで、おれは
「オキアミぶち撒いてエビで釣った」と白状しなくて
すんだ。
ま、とにかく、釣り師同士がイイのは世間話が無用っ
てことだ。
おいらは、世間話が苦手だ。
「しかしあれですねえ、中国内陸部の被抑圧層の反日
デモには困ったものですねえ」
「管ソーリの経済対策に期待していいんでしょうかね
え」
なんてケッ、そんなこと言えねえ言えねえ言いたくも
ねえ。
釣り師同士なら、どこぞの湾に青物が入ってきたと
か、どこぞの波戸でアオリイカが上がり始めたとかい
きなり核心だ。

おいらは、ビッグウェイブが、強風が大好きだ。デカ
イ魚を釣ることも。
マストハイの波に乗る興奮と快感、5kg超級の真鯛
を誘い、食わせ、引き合う興奮と快感、どっちが偉
いってわけじゃねえ、どっちも捨てらんねえ。
あんた、ウインドサーファーなんだろ?
(興奮による文体の乱れ、お許し願います)

ウインドサーファーってことは、おいらたちのよう
な、暑い、もとい、熱い釣り師になりうる、つよぉー
い属性があるってこった。
騙されたと思って始めてみな。
いいことだらけだ。
最高の風待ち手段になる、ウインドを利用するのでよ
く釣れる、カミさんはよろこぶわ、ガキにゃソンケー
されるわでえらい騒ぎだ。
ウインドサーファーなら、やんなきゃウソだぜ、ボー
ドフィッシング。
(あんまり)カネもかかんねえ。


次号からは実釣指南
道具も、技術も、調理も
哲学も、キスも、タコも



Seiji Satoh:
■昭和39年生まれ、46歳B型。80年代初期よりマウイに渡り、ホキーパアタックを敢行した、日本人ウェイバーのパイオニアのひとり。ビッグウェイバーとして、突っ込みの誠司として名を馳せる。ウインド、サーフィン、SUP、釣り、鮮魚料理、筋金入りのワタメン。現在、三浦海岸に「おもろいショップ」を建設中。
乞うご期待