![]() NEUTRAL, SYMMETRY, SLOW. スタンダップ、こんなスポーツ、めったにない。 スポーツはおおむねアドレナリンだ。それは視覚を研ぎ、 筋肉に血液を送り、臨戦態勢にして、あなたの性能を高め、 興奮をもたらす。ウインドサーフィンしかり。交感神経を優位にし、 風のなかで、波の上で、動く。 スタンダップもビッグウェイブに乗れる。ハードにやることもできる。 が、ベースはエンドルフィンだ。まったりするしかない眠い海で、能動的に、 過剰に、まったりするための手段だ。凪の、ひとつの瑕も、ひとかけらの 音もない海面を、深呼吸するように、自分のペースでパドルする。 アドレナリンではなく、エンドルフィンが分泌され、痛みや疲れを飛ばし、 現実を、夢のなかでのように描き変え、陶酔をもたらす。 ウインドサーフィンも、サーフィンも、ゴルフも、テニスも、非対称の スポーツだ。ホームゲレンデの風向きの偏向、レギュラー、グーフィー、 右打ち、左打ち……。非対称性は、多かれ少なかれ均衡を奪う。 スタンダップはシンメトリーだ。ボードに直立し、ポート、スタボー、 交互に漕ぐ。パドリングにより上半身が鍛えられるのはもちろん、 バランスボールに乗りっぱなしみたいなものだから、下半身、 体幹が鍛えられ、あなたのカラダは──心身は──バランスを とりもどす。ニュートラル・リセットされる。 スタンダップを加えると、海での時間が変わる。 脳が、カラダが、あなたが変わる。 ![]() |
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FIRST BEST CHOICE 75kg以上なら11'4"、以下なら10'6" ■SUPはシンプルな道具で、フリーライドだ、スラロームだと、ウインドのようにフクザツではなく、 それぞれの板のレンジも大きい。各メーカーのラインナップはおおむね9'3"~12"、短いほうからウェイブ→オールラウンド→クルージング系となる。 初めて買う板だが、性別に関わらず、75kg以上であれば(Naishでいえば)永松くんが持つ11'4"、75kg以下なら友莉くんの10'6"。 このクラスの板はオールラウンドで、1枚で、湖、川下り、フラット海面、日本のたるい波、ぜんぶ楽しめる。 各メーカー、長さとヴォリュームの相関性に大差はないので、上記を基準に、ショップや上級者に相談して決めると良い。 ■パドルは、身長+20-40cmのものを。アジャスタブルレングスモデルもある。 SUPにおいてパドルはボード以上に重要なパーツ。アルミ、カーボンに大別されるが、カーボンのほうがずっと軽く、シャフトがしなり、反発し、ブレードをムチのように返すので、はるかに効率的なパドリングができる。 しかし高価。一例をいうと、カーボンシャフトの某パドルは、¥68,000、460g。アルミの某は¥20,000、1300g。 ビギナーこそカーボンにすべきともいえるのだが……。 |
PADDLE WORKS パドリングは、パワーではなくリズム ■「大きな吊り鐘を指一本で動かす逸話」 SUPのパドリングもそれと同じである。大きな、重い物を、わずかな力でわずかに動かし、わずかな動きにシンクロした力を与え、動き出したそれを止めないよう、シンクロするリズムでパドリングし続ける。がつがつと力任せに漕げばいいというわけではないのだ。(っていうかダメ) この写真、永松くんは、「カーボンシャフトをしならせて」というリクエストに応えて、パワフルに漕ぎ、だから前傾しているけれど、この場合左足加重が増えて板が左右にローリングしがち。 基本は、友莉くんのように、自然に、ボードのうえにストンと立って、カラダのどこも力まず、 「大きな吊り鐘を指一本で動かす」ように、リズミカルに漕ぐのが基本。 |
CATCH→ HOLD→ RELEASE パドリングリズムは3拍子 ■SUP界でも、カッコイイのは、瞬速ではなくアベレージスピードが高い人。 失速しないよう、リズム良く、効率良くパドルすることが大切。そのために、この3拍子イメージが効く。 まずキャッチ、水の塊をブレードで捕らえ、ホールド、シャフトのしなりでタメる、体側でシャフトはムチのように返り、充溢した推進エネルギーが後方に噴射される。 |
TURNNING HOW TO インレイル、踏むべからず ❶テイルロッカーに乗って ■ターンするとき、「ノーズを上げる」とイメージする人がいるが、それは違う。 直進時にスタンスしているストレートロッカー部分から、テイルロッカーに乗るようステップバックする。要するに、テイルロッカーが接水してさえいれば、ノーズがどーなっていようが関係ない。 ❷レイルは使わない、板はフラット ■SUPのターンはウインドやサーフィンのそれとはまるで異なる。 ウインドやサーフィン上がりの人は、ターンというとインレイルを踏もうとするが、ずっと低速のSUPではずっとフラット、カーヴィングではなくスライドである。 いやもちろんウェイブライディングではレイルを使うけど、平水面ではね。 左ターンではレギュラー、右ターンでは |
グーフィーでスタンスするが、両足ともボードセンターにスタンスしてボードをフラットに保つ。 ❸腰を低く、胸をノーズに向け ■安定したターンのため、スタンスは広めに、とくに前足の膝と足首をしっかり曲げ、腰を低く、前傾姿勢を保つ。胸はノーズに向け、フロントサイドでパドリングすることによりバランスマージンを確保する。 このとき、胸が閉じて(ボードと並行になって)しまうと、ボードは背中方向にターンするので、バランスを失い、90%沈してしまう。 ❹小刻みに漕ぎ、きっちり180度ターンさせる ■パドルは推進だけではなくストックの役割を果たす。ターン中は、直進時より小刻みに漕ぐことにより、大きなアクションでバランスを崩すことなく、水面に杖をつくことで安定させる。 中途半端な角度ではなく、最初から、180度しっかり回すよう練習しよう。 |
LIGHT SLOW TURN スローでいいからリラックス ■大抵のビギナーは、後ろに落ちるのではと、ターン時のステップバックを怖がる。無理に下がって、しかしびびって前足に体重が残った、へっぴり腰になってしまう。 しかしこの友莉くん、大してステップバックしていないけどテイルロッカーはきっちり接水し、スタンスは狭く腰高だけど、リラックスしてボードの中心軸を踏み、フラットを保っている。 これでいいのだ。ライトでスローなターンでいい。基本ができれば、クイックな180度ターンも遠からずマスターできる。 |