………………西表島 原自然行──コギはその、ベストな手段だ………………

SUP ECO-TOURISM
西表島 原自然行
コギはその、ベストな手段だ


reportage by TOMO
photography by Kiyotaka Kitajima
screenplay by words-by-toko.com








ヒトの移動効率は、鳥やライオン、動物界最低だが、
自転車に乗ったヒトは、動物界一になるという。
水面ならSUPだ。自由になるだけではない。
水の張り、弾性、流れ、匂い、すべてを感じ取れる。
そのSUPで、西表島の原始河川や海を巡った。
HW06SUP-1.jpg

HW06SUP-2.jpg

PROLOGUE:
止めてくれるなおっかさん、
イリオモテがおいらを呼んでいる

■僕は、2005年、八重山諸島石垣島に移住し、連日、フリースタイルカイトのトレーニングに励んだ。
石垣島は、冬はミーニシ、夏はカーチバイ(夏至南風)と風に恵まれ、インリーフの海面はフラットと、トレーニングには最高である。
SUPを始めたのも、2006年、石垣島だった。
島にSUP乗りはいなかった。市販の道具はなく、サーフィンのプロダクションロングボード、パドルは木製の手作りだ。
漕ぐのを止めたら沈んでしまうので、ひたすらインリーフを漕ぎ続け、アウトの波に初めて乗った時の感動は今でも忘れない。
2008年に内地に戻ったが、そういうわけで八重山諸島への思い入れは深く、現在も年に1回は、トレーニングがてら八重山に遠征する。
大好きな先輩、仲間、自然、海が待っている。




まだ寒い3月始め、御前崎を発った。
今回の目的は、5月にハワイで行われるSUPレースのトレーニングを兼ねて、西表島へ行き、日本とは思えないジャングルの秘境をSUPで探検することだ。
石垣島からさらに船で約40分。西表島の先輩徳岡大之さん(西表島ダイビング、カイトショップ"waterman"経営)の店へ、いつも僕の写真を撮ってくれているアイランドフォトグラファーの北島さんと共に訪れた。
西表島は沖縄県の南端に位置する八重山諸島の一島。沖縄本島に次ぐ広さだが、人口は約1800人。島の90%は、イリオモテヤマネコ、カンムリワシ、セマルハコガメといった絶滅危惧種が棲息する亜熱帯のジャングル。浦内川、仲間川と、島としては大きな川が流れ、河口付近には広大なマングローブの森が広がる。
そして、海。八重山諸島でもベストと言われる珊瑚礁。これら日本とは思えない自然の懐深く、SUPで探検、体験する。
DAY 01:
落差55mの滝へ。神が棲むと
いわれたら、おれは信じる

■11~3月の八重山諸島は雨や曇りの日が多い。
ことに山々に囲まれた西表島は雲がかかりやすく、この時期の晴れ間は貴重なのだが、初日、いきなり晴天に恵まれる。海は暖かくトランクスでOK、最高だ。
20年以上島に住み、プロのガイドでもある徳ちゃんの案内で、船浦湾から川を遡り、
まずは沖縄県でもっとも落差──55mもの──がある滝、ピナイサーラへ。
老人の髭のように見えることから、島言葉でピナイ(髭のような)サーラ(滝)と呼ばれている。
無風の、完璧にフラットな水面。波も良いけれど、フラットも、まだ誰も触っていないパウダーを滑走するような気持ちよさがある。そのうえ
眼前にはピナイサーラ。カヌーツアラーたちも、立って漕ぐ僕らが羨ましそう。そう、羨め。
ペンションイリオモテにチェックイン。
西表島で最古の、どころか沖縄でももっとも古くからある宿泊施設で、現オーナーの伊藤さんはウインドサーファー。
原自然を壊さず、活かした建築で、庭の亜熱帯の植物、ハイビスカスなどを眺め、風に灼けた肌を慰撫されつつ、伊藤さんの手料理を楽しむ。

HW06SUP-3.jpg

DAY 02:
ヤバいウェイブ、ヤバいフラット

■朝、ウネリが少し入って波乗りができると、シークレットポイントへ。
西表島でももちろん波乗りできる。ローカルサーファーもいる。
徳ちゃんもその一人であり、みんな仲良く、楽しく波をシェアしている。
島ならではのコミュニティー。褒め合い、けなし合い(笑)ながら楽しく波に乗っている姿は、微笑ましく、そして羨ましい。
だからこそ、ずっと守っていきたいという思いはローカルも僕も一緒だ。
沖縄特有のリーフブレイク。その掘れた波の上でローカルたちはリラックスし、チューブを狙う。西表島にもいくつかサーフポイントがあるが、どこも浅い。
満潮時間外は、激浅でリーフは鋭く危険極まりない。鮫もいる。
もし、西表島でサーフする場合は必ず、ローカルサーファーにガイドしてもらいましょう。
自然、波をリスペクトする気持ちを持っていれば、彼らは優しく応えてくれるはずです。
さて、
アドレナリン系ウェイブに続いて、エンドルフィン系リバークルーズ。
浦内川は西表島北部を流れ、本流約18キロ。11本の支流を含めると約39キロと、
沖縄県下最長、亜熱帯の植物や動物の宝庫でもある。
流程の多くが、本土では道北の一部にしかない(護岸など人の手が全く入っていない)原始河川だ。
海が荒れていても、自然の消波提=マングローブの森、のおかげで川は静かで、台風の時には船を川に避難させる。
天気が良く、海も荒れていない日は、川はさらに静かになり、水面は鏡のようにマングローブの森と空を映し出す。
河口から上流へ。
SUPでクルーズすると、水面と森の境界があいまいになり、水面に映る森をクルーズしているような不思議な感覚に陥る。
カヌーでの浦内川クルーズは有名で年中通して人が絶えないが、この日は僕ら以外誰もいなかった。
静かだ。聞こえるのは鳥の囀り、遠くの滝、パドルとボードが水を切る音、あとは自分の呼吸だけ。自然の、なんという優しさ……。
マングローブの森は独特の匂いがする、土のような、木の根っこのような。
途中すれ違ったカヌー女子が
「きゃあカッコいい~、原始人?、みたい」
上半身裸、筋肉隆々、男汁たらたらの二人だから無理もない。これが都会の夜だったら即彼女らは110とプッシュしていたであろう。
夜、西表島の先輩、友達が集まってくれて、BBQ。僕が訪れると必ず集まってくれ、島の料理と酒をふるまってくれる。みんなそれぞれ、フィッシングガイドやダイビングの仕事をしていて、休みの日にはサーフィン、SUP、カイト、ウインドサーフィンと海で遊ぶ。
まさに、完璧ないちにち。
DAY 03:
美しすぎて嘘のようなラグーン。
現実感を得ようと水に飛び込む

■西表島と鳩間島の間にある無人島「バラス」へ。
この島、地図には載っていない。サンゴの殻が海流の影響で堆積してできた州なのだ。純白で、
潮の流れや海況によって形が変わる。周囲は透明度の高いサンゴの海で、シュノーケリングにも絶好。夏は観光客で賑わう。
原始人野郎ふたりだけだと絵が暑苦しくなるのfで、本日は西表島に2、3人しかいない女子SUP乗りが参加。
西表島上原港からパラスまで約2.5キロ。
彼女と徳ちゃんは上原港から船で。僕はトレーニングがてら、スターボードの12‘6で、 港からチャーコギでバラスへ。16分で到着。
風がないときは、サンゴの上にガラスを敷いたよう。無数の熱帯魚。美しすぎて嘘のようだ。
初めて来たわけでもないのに。
リアリティを得るためボードから海に飛び込む。
…………。
どんなコトバを使っても追っかなそうだから、
書かないでおく。
西表島の自然は、ここが日本であると信じられない。僕が訪れたかぎりでは、その生態系と同じく、世界のどこにも似ていない。日本最南端で遠いけど、思い切って行くべし。一生モノ体験が、きっと得られると思うよ。
HW06SUP-4.jpg


探検記=チャーコギのTOMO
(村林ともやす)
http://www.etikomot.com
■チャーコギとは石垣島弁で鬼コギの意。78年広島生まれ。プロカイトボーダーとして、
KPWTワールドカップ日本人最高位(9位)入賞、マウイでの世界大会では当時の
世界チャンピオンを破るなど海外でも活躍。近年はSUPにも力を入れ、内外大会に
積極的に参戦。耐久系SUPの、日本の第一人者

ECO TOURING
TIPS & INFO

西表島へのアクセス
■石垣港から、西表島の北側「上原港」と南側「大原港」の2つの船便がある。
"WATERMAN"がある上原の集落は上原港から徒歩1分。ゆえ上原港行きが
お奨めだが、冬~春先の、北風が強い日は欠航になることが多く、その場合
大原港行きとなる。大原港から上原までは車で約45分。
上原まではバスも運行しているがSUPなどの大きな荷物は積載不能。
("WATERMAN"の大荷物歓迎送迎サービスを利用する方法がある)




■石垣港から八重山各島へ高速船が就航している。八重山観光、安栄観光、ドリーム観光、3社があり、オススメは「ドリーム観光」フェリー。
船が新しく、ゆったりしている。ただし、ただし、石垣港→西表島は大原港行きのみの運航。料金は往復¥2,930天候が良ければ他社の高速船は上原行きも運航しているが、大原港から車窓の景色を楽しみつつ上原まで、も悪くはない。
ボードは1人1本であれば3社とも積載無料。
■ドリーム観光
http://www.ishigaki-dream.co.jp/

その他のフェリー会社情報
■安栄観光
http://aneikankou.co.jp/
■八重山観光
http://www.yaeyama.co.jp/

おすすめのシーズン

■夏は、川も海も観光客が多いので、SUP目的なら秋冬~春。冬は曇雨の日が多いが、晴れれば夏の陽気。

SUPスクール、レンタル、ガイド
■ウォーターマン
http://www.i-waterman.com
僕の先輩であり、西表島在住20余年、島きってのウォーターマン徳岡大之(トクオカ モトユキ)のプロショップ。
SUPスクール、SUPレンタル、クルージングガイド等。
■西表島では、個人でのSUPリバークルーズは禁止されています。危険が伴い、カヌーオンリーの川もあります。トラブルを避けるためにもツアーに参加してください。
西表島を訪れる前に、天候、ガイドの予約状況などにつき、まずは「徳ちゃん」にコンタクトしましょう。

アコモデーション
■ペンションイリオモテ
http://www.p-iriomote.com
ウインドサーファーでもある伊藤さんが経営する沖縄県でもっとも歴史のあるペンション。徒歩で行くことができる"トドゥマリの浜"はSUPクルージングに最適。自然を生かした宿の建築と伊藤さんの手料理でなごむ。
1泊2食・バス、トイレ付き=1人¥9,970(1室2名以上利用の場合)1泊2食・バス、トイレ共同=同¥8,500

■ペンションベルクル
http://www.pension-belkul.com
空いていれば是非、水平線の壮大な日の出を望めるオーシャンビューの部屋を。洋室と和室あり。
ダイビング、シュノーケルなどオプショナルツアー、それらとのパッケージプランも。
1泊2食(2名1室)=¥7500 ~冬季特別料金あり。