SURFER'S HOUSE
■ ハイク、マカワオ、クラ………。マウイのサーファーたちは、ハレアカラ山麓の、
"UP COUNTRY"に居を構えることを好む。
そこは、森と牧場にかこまれ、清浄で、
夜は薄手のセーターが必要で、眠りやすく、
何より海が見える。
黄昏時になると、斜光を返し、
それぞれの家の窓が黄金に輝く。
住人たちは、今日の、心地よい疲れに身を
委ねながら、ノースの海を眺めている。
明日のスウェルを夢見ながら。
下界であそんで天界にかえる。
■ カナハ、スプレックス、ホキーパ、そしてJAWS、マウイのノースショアは、サーフィンの、ウインドの、
カイトの世界的メッカである。
夕方、海から上がったローカルたちは、ビーチパークの
シャワーでさっと潮を流し、赤く錆びたピックアップや
ヴァンにボードを放り込み、それぞれの家に帰る。
ノースショアは、最高の、アクションの、アドレナリン
の場だが、じつは暮らすには最適といえない。
蒸し暑いし、貿易風で巻き上げられたマウイ特有の
赤土が、汗の肌にべたついたりする。
だからかれらは、ハレアカラ山麓のハイクや、
マカワオ、プカラニ、クラ、
いわゆる"UP COUNTRY"に居を構えることを好む。
バルドウィンアベニューに、ウルマル、カウヒコア、
ココモの3ロードが、そこへと帰るアクセスだ。
いずれも山麓をくねくねと登る細い道、途中、
ハレアカラから降りてきた雲で濃霧になり、視界が
奪われることもしばしばだ。
ハイクは渓谷、アップカントリーは森と牧場で、
涼しく、湿潤であり、ユーカリの葉が露で濡れ、
鹿や猪、孔雀などの野生動物がいる。
家に帰り、シャワールームでソープを使い、
裸足で芝の庭に出て、パパイアをもぎ、心地よい
エンドルフィンに身を委ね、しばしくつろぐ。
かれらは、下界であそんで天界にかえるのだ。
そして襟つきのシャツに着替え、マカワオの
ポーリーズや、パイアのジャックスに、
ディナーに出かける。
いつもの仲間と、今日の波について語り合う。
気づくと9時になっていて、
さっきから眠くてしかたなく、
あとはふかふかのベッドに身をなげるだけ。
いつもの、完璧な、いちにち。
Maui Haiku/ Robert Territehau's House ノースを見渡す3200坪の森の丘。 自分で建てた母屋とコテージ。住宅というより "プライヴェートリゾート" ■ 十代でウインドのプロになってから(仕事の拠点となる)、マウイに土地が欲しいと思っていた。この土地の話しを聞き、見にゆくと、ホキーパが正面に見渡せ走っているウインドのセイルが見えた。こりゃ買うしかない(笑い)。 93年のことさ。ただいささか広すぎて予算オーバーだった。 いくらだったって? 60万ドル、今だったらいくらするだろうね。 お金が足りなくて、生活できるだけの小さなコテージを建て、とりあえずそこに住みながらメインの家を建てる金を貯めようと思っていたんだが、ここの土地の法律では最初にメインハウスを作らなくてはならないという。仕方ない、自分で建てるしかない(笑)。 経験? 全くの素人さ。いろんな人に手伝ってもらいながら少しずつ学んでいった。 毎日朝7時から夜10時くらいまで家を建てていたよ、さすがに本業がやばくなってきた。 ワールドランキング2位だったのが、95年には4位、96年5位、97年6位とどんどん落ちていったので、午後2時になったら大工仕事を止め、海にトレーニングに行くようにしたんだ。でも余った時間はほんとこの家にかかりっきりだね。 そう、今も建設途中だよ。アイデアは自分で考え、それをどうすれば実際に作れるか専門家に相談しながらとりかかる。僕は完全主義、というか頑固で、いったん決めたら融通が利かないので完璧にできるまでやり通す。 |
ちょっとでも納得のいかない部分があったら壊して、またいちから作り直すんだ。だから時間がかかる。 メインハウスを作ったときにある程度学んだので、それからは自分でほとんどやれるようになった。大工道具もぜんぶ買った。それを仕舞うために小さな家くらいの小屋を建てなくちゃならなかった(笑)。 家造りで最優先したのは、まわりの美しい緑を殺さず溶けこむこと。そのため新建材ではなく、竹や無垢の木材などできるだけ自然素材を使った。それも──僕はタヒチの出だから──タヒチやハワイのポリネシアな匂いを感じさせるものを。インテリアはたくさんの竹を使った。これはタヒチのスタイル。たとえば水道管に竹を使ったり、洗面ボウルには大きな貝を使ったり。バスルームは石で造ったが色がいまいちだったのででぜんぶ壊して作り直した。細部について語り出したら切りがないけどね。 プライヴェートエリアでは外部の喧騒を感じさせないことに気を配ったね。広いので外の音とか動きはほとんど感じないし、同じ敷地に何人か部屋を借りて住んでいるけど、木々で互いのプライヴァシーは確保されてる。そうそう、ここにはね、オレンジ、ネクタリン、タンジェリンパパイヤ、マンゴ、アボカド、タヒチ原産のテイアレやタヒチアンガーデイニアなど約5000の草木が育っている。もちろんぜんぶ実が成って食べられる。 家屋の建設や補修だけでなく庭のメインテナンスもあるから、週に4日、7時から4時ごろまで時間を取られるよ。 サーファーハウスとしてので工夫点? とくに無いと思うよ、というか家にいるときはプロサーファーではない、スローな一人の男としてリラックスしたいしね。 |
foto by Darrell Wong
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夜、時間があるとき絵を描くのが好きなんだ。 いろんなプレッシャーから離れてリラックスできるんだ。 サーファーの家だとわかるのは……、そう、コアウッドのフレームに入った2枚のJAWSのライディング写真くらいだよ。 反面、ガレージはものすごい数の道具であふれている。これはプロサーファーならではだね。 全般的にもちろん自分らしい家で気に入ってるけど、波乗りと同じでやればやるほどさらに追求したくなる部分が出てくる。だから10年かかっても終えられない。でもそれが苦痛じゃない、どころか楽しい。楽しくないとこんな膨大な労力、かけちゃいないよ。 今の課題? 小さなものはいろいろあるけど、常に直してる。 中長期的な課題は、とりあえず完成させて、一息つくことだね(笑)。 |